HACCP導入効果のひとつに人材育成

HACCPの義務化について、いろいろと記事にしてみましたが、実際に認証制度として始まったのはいつなのか?


日本は1996年にHACCP普及推進のため、食品衛生法で認証制度をはじめました。それから20年ほどだった現在「義務化」として取り上げられるようになったのですが、この間の事業者の普及率はどうなっているのでしょうか?


農林水産省の調査によると、製造業では売上高が100億円以上の企業で8割超の導入率と言う事です。しかし50億円以下の規模では、3割程度でとどまっています。さらに、外食でも数十店以上のチェーン展開している企業はHACCPを導入しているところがあるのですが、中小企業はまだまだ普及していません。


その大きな原因して、”そもそも経営者や事業責任者がHACCP自体を知ろうとしないこと”が挙げられています。つまり「無関心」という事。


もちろん、食に関するサービスの提供には「衛生的」である重要性は認識していても、仕組みとして取り入れるまでに至っていないのだと思います。


なので「事業者が無関心なため、正しいHACCPの知識がなく様々な誤解も生まれている」そういった指摘がされてしまうのかもしれません。


正直、私も食品関連の会社に入り、この会社が「食品安全」に本腰を入れて取り組んでいたからこそ、HACCPやISO22000と言った言葉だけでなく内容も知る事ができたわけで、“HACCP導入には多くの費用がかかる”“専門知識を持った人材が必要”という先入観があれば、進んで取り組もうとはしないのかもしれません。


こうした食品安全の取り組みについて“利益につながらない”といった誤った認識が多くの事業所に広がっていた事は否定できないと思います。しかし、実際に取り組まれている事業所では、低コストの運用が主流となっています。


「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)+洗浄・殺菌(7S)を徹底すればいいんだ!」まぁ、HACCPの実務は実際はそうかもしれません。一般的衛生管理を継続的に監視していけばいいんです。そして重要なのは「危害を分析する」という事です。


「コストがかかる」「利益に繋がらない」と言った意見に対しては「そうではないですよ」とお伝えしたいです。実は、将来的なメリットやリスク回避が「そうではないですよ」の根拠になります。


HACCPを正しく導入することで、品質管理による不良在庫(食材、器具など)の減少、物を置く場所をきちんと決める(定置管理)などにより職場環境が改善されます。すると業務効率の向上や経費節約につながっる実例も多々聞かれます。もちろん食中毒の予防も出来る上に、さらに大きなメリットがあります。





HACCPは環境改善以外に、従業員教育の観点でのメリットが大きな期待になります。


見たり聞いたり、記憶に残っている方もいると思いますが、これまでに飲食店のアルバイトが、冷蔵庫に土足で入って寝そべったり、食材で遊んだりするなどのいわゆる「バイトテロ」がたびたび問題になりました。


なぜ彼らはそんなことをするのでしょうか?動画や画像をネットに掲載する為?そんな動機かもしれませんが「食品」に携わる事の重大さ、何が食中毒の危害になるか?食品事故の恐ろしさを知らないことが挙げられると思います。


例えば食中毒菌のノロウィルスは常在菌で、発症しない人でも保有していることがありますよね。保有者が冷蔵庫に入ったり食材を素手で触ったり、トイレで手を洗わずにドアノブを触ったりすれば・・・菌が器具や食材、他の人の手に移って料理の中に入ってしまうのは当然です。


また従業員への注意・指導の仕方にも根拠が明確になります。


こういった注意は“手を洗いなさい!”というだけでは理解されにくく、結局防止にはつながりません。“〇〇だから食材を直接触るときは手を洗いなさい”など、きちんと危害を知らせることが出来るようになります。そうすれば、アルバイトの意識も向上していくようななるはずです。HACCPの本質は、自店の危害を知ること、つまり「危害分析」なんです。


自店の危害を知るようになれば、食中毒以外にも、異物やアレルギー物質のコンタミなどの防止にも意識が向き、一層の管理強化に繋がっていきます。


HACCPの本質は、自店の危害を知り、PDCAサイクルで運用する


という事なんですね。

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